餅は餅屋  ~税務のことは税理士へ~

コラム 2017年6月21日 水曜日

日本に昔からある格言で、私の座右の銘でもあります。
 
 元々、餅は各家庭でつくものだったのですが、17世紀の江戸に「専属で餅を作る店」が登場したといわれています。

 餅にかぎらず、かつての日本人はとっても有能でした。そう、現代を生きる私たちよりはるかに。

 だってそうでしょう?薪を割って燃料を作り、火を起こし、自分で耕した田畑からとれる作物と釣った魚で食料を調達し、味噌や醬油まで自分で作り、着物だって繕っていたのですから。
 私など、上記のどれ一つとして満足にできる自信はありません。

 でも不思議なことで、そんなに有能で勤勉だった昔の日本人より現在の私たちのほうがはるかに豊かな生活を謳歌しています。これは一体どうしたことでしょう?

 実は「分業」がキーワードなのです。専門分野はその道の専門家に任せたほうが、全体の生産量は上がる(つまりお互いに豊かになれる)ということを、歴史が証明しているのです!

 デヴィッド・リカードという19世紀のイギリスの経済学者がいます。
彼の提唱した「比較優位論」は、餅は餅屋をさらに過激にした主張で、「仮に全ての分野において有能な人間がいても、その中で比較的不得手な分野を(自分より無能な)他人に任せることで、全体の利益は上がる」というものです。

 これってどういうことなんでしょう?

 あるところに、営業も経理も得意な実業家のAさんがいたとしましょう。
 彼は年間1,600時間のうち、1,200時間を使って2,400万円の収益をあげる営業力を持っています。残りの400時間は経理にあてます。
 一方、学校で簿記の勉強をした新卒のBさんは、営業に1,200時間を使っても600万円の収益しか上げられません。しかし経理は、500時間あればAさんと同じことができます。
(営業も経理もAさんのほうが有能ですが、経理についてはBさんは「比較的有能」です。)
 さて、このAさんが、新入社員Bさんを年400万円で雇うとどうなるでしょう?

 

 AさんはBさんに経理を任せることで、1,600時間をフルに営業に使えます。収益は3,200万円です。一方のBさんは、経理に使う500時間と、営業に使う1,100時間で550万円の収益をあげられます。

 Aさんが1人でやっていた時には彼の収益は2,400万円でした。しかし、(営業も経理もAさんには及ばない)新人Bさんを雇うことで、彼の懐にはBさんに給料を支払った後でも3,350万円が残るのです!(しかもBさんには400万円が入ります)

 分業は、(優秀かどうかにかかわらず)全ての参加者に富をもたらす。
 これが、デヴィッド・リカードの発見した「比較優位論」という理論です。

 能力の劣る者ですら、分業したら利益が上がる。ならば不得手な分野をその道の専門家にお願いしたら利益はもっと上がるに違いありません(そんなわけで、PC音痴の私は、HP作成を専門家にお任せしました)。

 

「花を見て 葛団子までも しられけり 餅は餅屋の よしの山哉」
                    (類似名所狂歌集  1676年)

 「餅は餅屋」江戸時代の和歌に登場するこの言葉って、ガチガチの身分制度があった当時としては、相当に先見の明に満ちていたと思うのですが、いかがでしょうか?

 

香川県高松市の税理士・会計事務所

『あなたのまちの税理士さん』

株式会社ダックス会計/吉田貴志税理士事務所 

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